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「理想のワークとライフの関係性」とは?変化の時代に考えてみる。

日々の仕事は充実していますか? プライベートはどうでしょう?
仕事と生活の両方を充実させて豊かに生きることは理想の人生と言えるかもしれません。ただ、与えられた時間は誰にとっても平等で、同じように流れていきます。仕事と生活を充実させて豊かに生きるために、「習慣」はどのような手助けができるのでしょうか。


仕事もプライベートも主役は私自身

仕事は生活していく上で欠かせないものであり、生きていくなかでやりがいを感じさせてくれます。一方で家族や趣味などのプライベートを充実させることも、自身を高め豊かな人生を送るうえで欠かすことができない要素です。
 
理想としては仕事もプライベートも充実した状態が望ましいのですが、残念ながら人間に与えられた時間はみな等しく限りがあります。

仕事時間とプライベート時間をともに充実させる方法はあるのでしょうか……?
 
現代人の多くが抱えるジレンマについて、以前に「習慣と心の在り方」を探求した際にお話をうかがった松本紹圭さんのメッセージのなかに、そのことを考えるヒントがあるような気がします。

僧侶/武蔵野大学客員教授/株式会社Interbeing代表取締役 松本紹圭さん

松本さんは東京神谷町・光明寺の僧侶として活動するかたわら、インド商科大学院(ISB)にてMBAを取得後にお寺経営塾「未来の住職塾」を開講するなど、既存の枠を越えて現代仏教の可能性を追求され、産業医ならぬ「産業僧」としても活動されています。

いろいろな顔を持っていても同じ人間

働く人たち一人ひとりが多様なニーズを持ち、働き方のバリエーションも多彩になってきている現代において、「これからの働き方は、これまでとは大きく変わってくると思います」と語る松本さん。社会全体の価値観が「モノ」から「コト」に移り変わっているように、「働く」ことにも精神的な豊かさを追求する社会に変わりつつあると話します。
 
松本:これまでの誰かの指示に従って働くとか、給料のために働くということではなくて、内発的な動機から生まれる仕事が社会的にも求められ、その価値が高まりつつある時代です。そのような時代において、仕事とプライベートを切り分けない、というあり方もひとつの視点として重要になってきます。
 
人間は仕事で見せる顔と家に帰って見せる顔、気の置けない友人たちに会うときに見せる顔と、立場や環境によって現れる顔は異なる場合が多いと思います。ですが、そうはいってもひとりの人ですよね。たとえばプライベートはボロボロだけど、会社に着いた瞬間にエネルギー100%で働けるということはありません。立場によって顔が変わるのは自然なことですが、私たちには、そうした振る舞いを建前のように、必要以上に続けてきたクセがついてしまっているかもしれません。

いろいろな顔があっても根っこはひとりの人間

松本:これからは、そういった立場や役割といった枠組みのなかの存在としてではなくて、「ひとりの人としてどうなんだろう」と考えることが重要です。ポジションや肩書、利害を伴う枠組みは、社会を形成するうえで必要な場面もあります。そこから完全に離れるというわけではないですが、大切なのは、それを相対化するような、外側から見るような視点も持ち合わせていること。普段は切り分けて生きているけど、根本のところでは切り分けられない事実を客観的に見るということです。

企業もこれまでの枠組みを越える時代に

「産業僧」として自身を相対的に見る視点を持つことをサポートしているという松本さん。また、変化は個人だけでなく、社会や会社にも及ぶだろうと話してくれました。
 
松本:与えられた枠組みのなかで仕事をして、そこでの役割を果たすという構造自体が完全に消えることはないですが、ある程度安定した社会のなかで、自分を機械化してそこにはめていくという時代は終わりつつあると思います。実際にそれでは会社としてもパフォーマンスが上がらない時代になっています。
 
働く人自身のあり方としても、持続可能でないと仕事は続けられません。どういうマインドで取り組むか、そして、そのマインドを働く仲間と共有できる関係性にあるかがパフォーマンスに大きく影響します。どういうことが今後の社会の価値になるか。社会全体が多様化の方向にシフトするなか、枠組みのなかに留まっていること自体の価値は下がっていると言えるかもしれません。

会社で働くということの意味、そして……

そして松本さんはより豊かな人生を送るためには自分自身を高めることが重要だとし、そこには「習慣」が重要なかかわりを持つと言います。
 
松本:「習慣」をつくるということは、私自身をつくっていく、整えていくということであると思いますし、「どう生きたいか?」に直結していることだと思います。人間は「習慣」によって形づくられていて、それをしっかり整えることは生き方の根幹に関わる部分です。仏教における「修行」もそういった意味で、習慣とは切り離せない関係にあります。
 
そして、私が企業で働く人に関わるうえでの「習慣づくり」は人材開発、人的資本の開発であると思っていて、そこでは修行と養生を重ね合わせた「修養(しゅうよう)」という言葉を大事にしています。

松本:この先、どんどん働き方が自由になっていくなかで、組織に属してチームの一員として働く場合、そこには修行の要素を見いだせるのではないかと思います。ブッダは「修行はひとりではできない」と言いました。必ず仲間と行なうものであり、修行の完成というのは「いかによき仲間と修行できるかにかかってくる」とも言っています。つまり、「どこで働こうかな」というのは、いまの自分にとって必要な修行の場を探すということです。
 
「養生」とは自己治癒力をちゃんと高めていくこと、そして「修行」というのは大乗仏教でいうと世のなかのために働きかけていくということですね。それを仲間と一緒に積み重ねていくということです。そんなふうに考えていくと、私は会社や組織というのは修行道場としておもしろいなと感じていて。そこはよき習慣をともにする仲間たちが、その習慣を維持して磨いていくのにお互いに貢献している場所なのだと思います。

時代の変化に適応するために必要なこと

松本さんのお話を聞いて、どちらも同じ人間でありながら、仕事と生活でスタンスを使い分けるという矛盾に気づかされました。
 
そしてまた、仕事とプライベートの両立を考える「ワークライフバランス」の最終的な目的が豊かな人生を送ることだとすると、お話のなかに仕事とプライベートが対立して時間を奪い合うものではなく、調和してともに高め合っていくべきものになるためのヒントがあるような気がします。

変化を余儀なくされたコロナ禍だけでなく、それ以前からあった働き方改革など、みなさんも大きな時代のうねりを実感しているかもしれません。まさに現代はパラダイムシフトの真っ只中にあると言えるでしょう。変化に合わせて、私たち自身も変わっていく必要があるのだと思います。
 
その第一歩として、日々の「習慣」を見つめなおすことは大きな力になると思います。当たり前だと思っていたことを見直し、再発見することで、日常の見え方も変わるかもしれません。
 
LION Scopeでは、「習慣」についてこれからも広く・深く探究していきます。みなさんも「習慣」について一緒に考えてみませんか?

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