ファッションの選択で人生が変わる。「好き」を習慣にした人の自分らしさ
好きが高じて、ほぼ毎日「着物・和装」で暮らしているという方がいます。
実はその方はこれまで、一般的な洋服で仕事もプライベートも過ごしていたそうです。
お話をうかがってみると、「好き」から生まれた習慣が人生を豊かにし、ポジティブな影響を与えることを垣間見ることができました。
みなさん、最後に着物を着たのはいつですか?
たった1年半で30枚以上をコレクション。毎日を「着物・和装」で過ごす生活
今回お話をお聞きしたのは、ふとしたきっかけで着るようになった和装の世界に魅了され、わずか1年半の間に集めた着物は30枚以上にものぼるという山本梨央さん。日常のありとあらゆる場所に着物で出かけるだけではなく、さらには寝るときにもパジャマではなく寝巻き用の浴衣で過ごしているそうです。
そして、浴衣で集まる納涼会を企画・運営するなど、着物に関するイベントを精力的に開催しています。また、着物の専門誌の仕事を受けるだけではなく、モデルとしても出演するなど、いつしかそれがご自身の仕事にもつながり発展しているそうです。
一歩踏み出したことで、「好き」が公私ともに習慣化
着物というと、私たちからするとなかなかハードルが高そうですが、山本さんは「意外と手軽に着られるものや着心地が良いものも多いんです」と語ります。
タイトルのお写真も、実はデニム素材の着物で、他にも歩きやすいスニーカー素材の草履やエプロンの代わりに袖までしまえる割烹着を活用するなど、今の生活に合わせたものを使用することで、日常生活で不便を感じることなく快適に過ごすことができるそうです。
山本さん:普通に考えたら、少し昔の日本では着物を日常的に着ていたんですよね。当時の人が毎日大変な苦労をして着物を着ていたとは思えないので、調べてみると数分でささっと着られる方法やアイロンを使わずに保管する方法など、いろいろなことを知ることができました。私は着物を着ることが日常になりましたが、そのことでそれまでの生活習慣が制限されたり狭まったりということはないですね。
それまでメディアや広告などに関わる企業に勤務し、一般的な洋服を着て生活していたという山本さん。彼女が和装で過ごすようになったのは、会社からの独立を決めたとき。「せっかくだから新しいことを初めてみたい」と考えていたところ、「着物とかいいんじゃない?」と軽く言われたのがきっかけだったそうです。
最初は山本さんも「着付けは難しそうだし、値段も高いのでは」と考えていたそうですが、試しに古着屋さんに行ってみると、着物に帯、襟、襦袢といった一式の値段がなんと1万円程度。意外と安く揃えられることを知り、親切な店員さんの後押しもあって、着物への興味が加速。そこからは動画サイトなどを駆使して独学で着付けを学び、毎日着物で過ごすことが習慣となったそうです。
そして、和装姿をSNSなどで発信していると、着物専門誌の編集部から声がかかります。
山本さん:最初は記事を書くライターとしてのオファーだったのですが、「ついでに出演もしてみませんか?」といった感じで、モデル兼ライターとして雑誌に登場することになりました。撮影現場だとスタイリストさんがいらっしゃるので、それまで独学だった着付けを教えてもらえるというラッキーも続き、悩みが解消していってどんどん短い時間で着られるようになっていきました。
好きなものが仕事につながり、その仕事を通じてさらに興味を深めるという好循環で、山本さんは「好き」という気持ちを高まらせ続けています。
「好き」がつくってくれた自己肯定感
着物を日常的に着るようになったことで、身の回りにあるものを観察する習慣にも変化があったと山本さんは語ります。
山本さん:例えば出張で地方に行ったり、東京にいても伝統工芸の展示などに行ったりした時に、だいぶ見方が変わったと思います。伝統的な着物は広げて展示されることが多くて、以前はその模様などを絵画のようにしか楽しんでいなかったのですが、いまでは見た時にこれを身につけたらこういう姿になるのだろうなというのを想像できるようになりました。楽しめる幅がずいぶんと広がったというのは、着物を着てみなかったらわからなかったことだろうと思います。
着物がきっかけになって、初めて会う人たちにもすぐに存在を覚えてもらえるようになったり、パーティなど大勢が集まるシーンでもすぐに見つけてもらえるようになったりしたそう。着物で過ごす日常について生き生きと語る山本さんの姿を拝見していると、「着物・和装」の奥深い世界だけでなく、自身の「好き」という気持ちに肯定された山本さんご自身の魅力も感じます。
山本さん:着物を着るようになって、自信が持てるようになったのはすごく大きいです。もともと洋服に興味がなかったというか、好きだなと思ったものが自分には似合わないことが多くて、あまりファッションに関心が持てないことがずっとコンプレックスでした。でも、自分で言うのも変ですけど、着物は割と似合うというか、着ていてすごくしっくりくるんです。自分が「これだ」と思うものが着られるというのは結構大きいかもしれないですね。
そして、「好き」が日常になることは、さらなるポジティブを生み出すきっかけになりました。
山本さん:場所に合わせて着物を着てきました、というわけではなく、「毎日着物なんです」って言うと、どんな場でも納得してもらえることが多くて。やはり「毎日着ているから」という裏付けがあるから、お仕事の場でも着物のまま行けますね。習慣化していたからこそ、自信の根拠としてあるのかなと思います。
これからも着物での生活を続けていくだろうと話す山本さん。着物の楽しみ方の幅もますます広がりそうです。
山本さん:着物で関わる方々は、やはり年上の方が多いですね。着物を楽しみながら年を重ねるっていう、そういう方々の素敵な生き方に接することができるのも素晴らしいです。年を重ねるごとに似合う着物も楽しみ方も変わってくると聞くので、これからにもワクワクしています。
生活のなかに推しがあるという幸福
今回取材をして、「好き」には自分の人生を新しいものへ導いてくれる力があると感じました。
期間に関係なく、没頭できるほどの熱量がある「好き」を見つけられたことで視野が広がり、新たな出会いが生まれ、日常が変わっていく。そしてその生活が習慣になったことで、結果的に自分をより好きになったという相互作用があることに気がつきました。
着物との出会いによって生まれた習慣が山本さん自身をさらに輝かせ、人生を切り開く大切なアイテムになっているのかもしれません。「好き」がある生活の可能性を感じることができたように思います。
LION Scopeでは、「習慣」についてこれからも広く・深く探究していきます。みなさんも「習慣」について一緒に考えてみませんか?
タイトル画像撮影:上原和人
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