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小さな習慣が大量のゴミ削減に?日本の「詰め替え」文化からみえたこと

海外ではあまり見かけない「日本独自の習慣」といえば、なにを思い浮かべますか? 
例えば食事をするときの「いただきます」のあいさつや、家に入るときは靴を脱ぐなど、さまざまな習慣があると思います。 

そのうちの一つが、「詰め替え」の習慣。洗剤やシャンプー・ボディーソープといった日用品などで使用するボトル容器の再利用は、「もったいない精神」が根づく日本らしい生活習慣なのかもしれません。

ですが、ゴミの削減に貢献できる「詰め替え」は、世界的に関心が高まるSDGsの流れにもマッチした習慣といえそうです。

今回は私たちが直面している「ゴミの削減」という課題を前に、国内外の「容器・包装」にまつわる習慣を考えてみたいと思います。


日本国内のゴミの量は1年間で東京ドーム110杯!

環境省の発表によると、2021年度(令和3年度) の日本人1人の1日当たりのゴミ排出量は約890gだそうです。

計算してみると、
1週間で6.23kg(2リットルのペットボトル約3本分)
1ヶ月で27.6kg(小学4年生の平均体重〈約30kg〉)
1年で331kg(50ccのバイク〈100kg前後〉が3台分)

となり、全国で考えると1年間の総排出量は4,095万トン。
なんと、東京ドーム約110杯分にも及びます。

1人が出すゴミの量は小さいかもしれませんが、それが積み重なることで途方もない数字になっています……。

そして、同じく環境省によると、2021年度の容器・包装に関わるゴミが全体に占める割合は28.5%。単純計算ですが、約1,167万トンが容器・包装に関わるゴミであり、私たちは1日あたり約250gの包装紙や容器を捨てていることになります。

私たちが直面している「ゴミの問題」について考えを巡らせているときに行きついたのが、いま世界的な広がりを見せている「ゼロ・ウェイスト」という考え方です。

根本的なところに目を向ける「ゼロ・ウェイスト」とは

「ゼロ・ウェイスト」とは、無駄や浪費をなくし、そもそもゴミを出さないようにしようという考え方です。
ゴミは大きく分けると、「埋める」「燃やす」「リサイクル」の3つの方法で処理されていますが、それぞれに問題を抱え、ゴミ処理はひっ迫した状況となっています。

そのような諸問題に対応するために、視点を根本的なところに向けて、はじめからゴミを出さないようにする――。それこそが世界に広まる「ゼロ・ウェイスト」の価値観です。

また注目すべき点として、これまでリサイクルが難しかった素材を再活用するための技術革新や、そうした研究に携わる人の雇用拡大につながるなど、ゴミの問題だけではなく、そのほかの社会課題の解決に結びつく可能性もあります。

このような考え方は、広く共感を呼んでいます。1996年にオーストラリアの首都キャンベラが世界初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を出したのを皮切りに、ヨーロッパやアメリカの各都市に広まり、日本でもいくつかの自治体が「ゴミをゴミにしない」活動に積極的に取り組んでいます。

ゴミを減らすことになる習慣。「詰め替え」と「量り売り」

「ゼロ・ウェイスト」に貢献できる習慣としては、マイバッグやマイボトルを持ち歩く、いらなくなったものを譲る・売る、古くなったものを修理・リメイクしながら使うなど、さまざまなかたちがあります。そのなかで、手軽に実践しやすいものとして、「詰め替え」や「量り売り」という習慣があります。

そこで思い出したのが、以前にLION Scope編集部で話し合っているとき、メンバーが海外で経験した「容器・包装」の違いが話題になったことです。

メンバーの一人は欧州のとある国で地元の人が通うスーパーを訪れたところ、野菜や肉、魚をはじめ食品の多くが日本であまり見かけることのない「量り売り」で提供されていたそうです。
包装も紙袋などがメインで、脱プラスチックの意識が高い国だと感じたといいます。しかし、日本では当たり前に存在する「詰め替え」用品はあまり見当たらなかったことに驚いたとのこと。

一方で、東南アジアのほうでは比較的「詰め替え」が一般的になりつつあると、アジア圏を訪れることの多いメンバーが教えてくれました。
「詰め替え」習慣が先行している日本の影響などもあり、アジア圏には習慣として受け入れられているようです。国や地域、エリアによって好んで使われる「容器・包装」に違いが生まれるというのは非常に興味深い点です。

ゼロ・ウェイストの一つである容器に必要な分の洗剤などをいれる「量り売り」

「ゼロ・ウェイスト」を後押しする日常の習慣

容器・包装に関わるゴミを減らすための対策として、日本では「詰め替え」が当たり前の習慣として受け入れられています。電通と電通総研が2021年に世界12カ国で行なったサステナブル・ライフスタイル意識調査では、日本の約7割近い人が「詰め替え商品を買う」と答えており、その意識の高さがうかがえます。 

一方で、イギリスや中国では「詰め替え商品を買う」と答えた人は、詰め替え商品自体が流通していないという実情もあり、3割ほどとなっているそうです。かといって各国がゴミの削減に取り組んでいないわけではなく、食品などについては、「量り売り」が普及している国・地域もあります。

最近では日本でも少しずつ食品などの「量り売り」を見かけることも増えてきました。量り売りは包装の量 を減らすことができ、また、必要な量だけを購入することができるので食品ロスなどを減らすことができるというメリットもあります。

日本は湿度が高く、特に生ものなどが傷みやすい環境があるので、その点で密閉できる包装や容器が重宝され、一般的になったのかもしれません。

そして、その流れを受けて、ゴミを減らすための「詰め替え」という習慣がさまざまな商品で定着してきたと考えることもできそうです。

 方向性に違いはありますが、「詰め替え」と「量り売り」はどちらもゴミを減らす習慣という観点では同じです。
そしてそれらは、世界各地に広まる「ゼロ・ウェイスト」という考え方のなかで大きな役割を果たす習慣といえます。

 あらためてゴミの排出量を考えてみると、その数字の大きさに圧倒されます。実際、日本のゴミの排出量は先進国のなかでは少ない方だといわれていますが、年間で自分の体重の何倍もの量のゴミを出していると身近にとらえると、誰もが驚くのではないでしょうか。

しかし、それも視点を変えてみると、習慣として1日100g(みかん1個分)のゴミを減らし続ければ年間で36kgの削減になり、日本全体で見れば東京ドーム14杯分のゴミを減らすことにもつながります。
これは1年間の総排出量の12%に該当します。

毎日みかん1個分のゴミ削減という一人一人の些細な習慣がじつは大きな力になる可能性を秘めています。

毎日繰り返すからこそ大事にしたい「習慣」

今回、ごみの削減やそれにかかわる習慣について考えてみましたが、実は暮らすエリアや文化・風習の違いで「詰め替え」と「量り売り」のような習慣の違いが出てくることに編集部としても新たな気づきや発見がありました。
 
習慣は個人が積み重ねてきた結果として定着するだけではなく、暮らしている国や地域、風習に寄り添うように形を変えて広がるものでもあるのかもしれませんね。
 
そしてその広がった習慣がまた、時代や経験を積み重ねることでアップデートしていくのかもしれないと気づかされました。

 毎日繰り返す「習慣」という何気ない行為にこそ、日常の本質が潜んでいるかもしれません。

そして、日常のなかの小さな「習慣」が、やがて社会全体に大きな影響を与えることになるかもしれないと気付くこともできたように思います。

LION Scopeでは、「習慣」についてこれからも広く・深く探究していきます。みなさんも「習慣」について一緒に考えてみませんか?


出典:
「環境省」
一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について
https://www.env.go.jp/press/press_01383.html
 
容器包装廃棄物の使用・排出実態調査の概要(令和3年度)
https://www.env.go.jp/recycle/yoki/c_2_research/research_R03.html
 
「電通総研」
サステナブル・ライフスタイル意識調査2021
https://institute.dentsu.com/wp-content/uploads/2021/12/%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%882021-1.pdf


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