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【JICA×ライオン】前向きな衛生習慣をバングラデシュへ

外から帰って来たときや食事の前に手を洗う。日ごろ当たり前に行っているこの習慣を、あなたはどうやって身に付けましたか?

今、前向きな衛生習慣を南アジアのバングラデシュで根づかせようとライオンのプロジェクトチームが奮闘中。政府機関など多くのステークホルダーが関わる中、異なる文化を持つ地域でのプロジェクトは、どのように進んでいるのでしょう。
活動が2年目を迎えた今、チームを動かす熱い思いとは?


チームが目の当たりにした現地の状況

「このプロジェクトは、JICA(独立行政法人国際協力機構)と連携して行っているものです。バングラデシュでは、衛生状態の悪化による感染症の蔓延が社会問題となっており、バングラデシュ政府から日本政府に支援を求める依頼が入りました。JICAとバングラデシュ食品安全庁は、2021年から『食の安全プロジェクト※』を立ち上げ、現地の食品事業者の機能強化や検査体制の構築と、生活者への啓発活動を行うことにしました。折しも2023年にバングラデシュで事業を開始することになっていたため、JICAと連携して現地の感染予防のためにライオンが貢献できるのではないかと考えたのがきっかけです」(プロジェクト担当者)
※バングラデシュ食品安全庁査察・規制・調整機能強化プロジェクト

ライオンは成長戦略の1つとしてインフェクションコントロール(感染
予防)を設定し、これまでも海外における衛生習慣の定着に取り組んできました。

「そこでバングラデシュへの支援に向けた取り組みとして最初に行ったのが、アパレルブランド「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」とコラボレーションした『キレイキレイ』の企画品です。この売上の一部を寄付する形で参画することになったんです」(プロジェクト担当者)

アパレルブランド「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」とのコラボ企画品 (販売終了)

2年目に入った本プロジェクト。ライオン社内で組まれたプロジェクトメンバーは早速、調査のためにバングラデシュの首都であるダッカへ。しかし目にしたのは、決して衛生的とは言えない光景でした。

「ちょうど先月現地に行ってきました。バングラデシュは気温も湿度も高くて、菌が増殖しやすい環境だなと感じました。ダッカの中心部は道が舗装されておらず、雨が降ると大洪水になってしまうんです。住環境は収入によって大きく異なり、裕福な家庭は清潔な住居で暮らしていますが、そうでない家庭は炊事場や浴室、トイレが共同で、どこも黒ずんでいて清潔とは言いがたい状態でした。台所の簡易検査では菌が検出され、口から入る菌による病気の発生件数が多いことなども分かり、衛生状況にはかなり課題があることがわかってきました」(プロジェクト担当者)

バングラデシュでは主に手を使って食事をする文化のため、食事の前後には手を洗っていると伺いました。

「バングラデシュの国民の多くはイスラム教徒です。1日5回のお祈りの前に身を清めるという意味でも、手洗いをしています。つまり、バングラデシュの人は手洗いの習慣があるわけです。こうした現地の文化的背景を踏まえ、感染症の緩和や減少につながる取り組みについてチーム内で討議を重ねました。その結果、我々が着目したのが菌に関する正しい衛生知識や手洗いなどの重要性です」(プロジェクト担当者)

感染症のリスクを減らしていくには、衛生に関する正しい知識を身に付けるだけではなく、実際に行動変容を起こしてもらう必要がありますよね。

大人は、なかなか身に付いた習慣を変えられませんが、子どもはまっさらの状態。よい習慣を教えれば、スポンジが水を吸収するように、すぐに自分のものにしていきます。そこで、我々は小学校での手洗い授業が効果的だと考えました。この考えから、食を起点とした衛生知識を啓発する活動として「小学校での手洗いの啓発」がスタートしました。小学校という場所は、人々を平等に扱うコミュニティというのもとても大事なポイントですね」(プロジェクト担当者)

2万4千人の子どもたちに届いた手洗い授業

県の代表の教師が、衛生に関する教師研修に参加。集落に戻ったら、インストラクターとして地元の小学校の代表教員に指導をします。
手洗い授業を熱心に聞いている子どもたち

バングラデシュには県が64県あり、1県あたり約1,000校の小学校があります。数が多いため、一校一校すべてにスタッフが行くわけにはいきません。そんな中で、より多くの子どもたちに、手洗いの大切さを伝えるにはどうしたらよいか。プロジェクトで議論して採用されたのが“カスケード方式”でした。

カスケード方式とは、研修を多階層で伝達していくやり方です。まず県の代表の先生方が教師研修を受けます。次にその先生方がインストラクターとなり、各小学校の代表教員に対して研修を行う。そして、代表教員が自分の小学校に持ち帰り授業を実施します。実際、2023年秋に初めてダッカ管区のナラヤンガンジ県で実施し、結果的に県のすべての小学校539校、約2万4千人の子どもたちに手洗い授業を行うことができました」(プロジェクト担当者)

重要なのは、子どもにとってわかりやすいことです。バングラデシュでの通常の授業は、先生から子どもたちへ伝えるだけの一方通行が多いそうで、普段とは違うゲーム形式や双方向のやりとりを行う授業を実施しました。まず、カードゲームからスタートします。食に関する良い事例と悪い事例が描かれたカードを見比べて、どこがよいのか、どこが悪いのか、子どもたち自身が考えて意見を出してもらいます。そしてカードで扱った良い事例と悪い事例を元に、今度は紙芝居を見せながら先生が解説します。先生が次々に投げかける質問に、子どもたちからもどんどん声があがっていて、非常に楽しく学べたようです」(プロジェクト担当者)

取り入れたカスケード方式の説明

他国の政府や機関と取り組みを行う際には、日本流のやり方を押し通すのではなく、現地の流儀や状況を理解することも成功へのカギの一つと言えます。「この授業を受ける前と受けた後に、子どもたちに『ごはんを食べる前やトイレに行ったあと、どのように手を洗いますか』『果物を食べる時の行動で次のうち、どれが正しいですか』といった食品衛生クイズを実施しました。すべての質問に対して、活動後に正答率が上昇していましたので、基本的な知識の習得に、つながったのではないでしょうか。また、現地のスタッフもこの取り組みに参加したことで、未来の購買層である子どもたちにライオンの名前を知ってもらう機会にもつながったと考えています」(プロジェクト担当者)

未来に向けた我々の想い

初等教育省の後押しは大きかったように思います。バングラデシュ政府の教育省がこの取り組みの意義を認めてくれ、教育省から県に、県から各小学校に、手洗い授業を一斉に行うという通達が出たからこそ、全校で実施できました」(プロジェクト担当者)

2024年はダッカ管区近郊等の小学校約1,400校(約5万人)の子どもたちに向けて、手洗い授業を実施する予定と聞きました。

今年の目標は、学校で学んだ子どもたちが知識を家に持ち帰り、家族に伝えること。子どもたち自身が発信者となり、どんどん伝えていって家族まで情報が届くと40万人、50万人に広がる試算です。そのために今は、子どもたちが自分から伝えたくなるような楽しい要素を盛り込んだツールや仕組みを開発中です」(プロジェクト担当者)

2024年も多くの子どもたち届けていきます。

手洗いや台所の衛生など食を起点とした衛生習慣を根づかせるために、子どもたち・小学校というコミュニティを中心にどう広げていけるか、それが課題であり挑戦、と担当者は力強く語ります。

バングラデシュの人も、お祈りや食前食後に手を洗うという“無意識の習慣”はある。でも、それでは感染予防にはまだまだ不十分だと言えます。いかにふだんの習慣を「前向き」に続けられるかが大事なんですね。“Positive Habits(ポジティブ・ハビッツ)”が我々の目指すところです。やらなきゃいけないものから、前向きに楽しくできる習慣に転換していきたいですね」(プロジェクト担当者)

ライオンには今年で81回目を迎えた「全国小学生歯みがき大会」をはじめ、長年にわたって歯みがき習慣を啓発してきた歴史があります。子どもたちが前向きに楽しく歯みがきをしてきたからこそ、子どもたちのむし歯は減少しました。

「長期間の取り組みによって、日本で子どもたちに歯みがき習慣が根づいてむし歯が減ったように、バングラデシュでも衛生習慣が根づき、5年後、10年後に感染症が減ったね、清潔になったね、という状況を我々が作り出したいですね」(プロジェクト担当者)

ライオンの企業パーパスは『より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)』。日本だけでなく海外にも良い習慣を広げることは、ライオンの経済的な価値を高めていくことにも通じるわけですね。

2025年からの新工場稼働に先立ち、バングラデシュではライオンの台所用の液体洗剤、衣料用洗剤、ハブラシが発売されています。ライオン製品を現地の家庭で当たり前に見かけるようになる頃、バングラデシュの人々の間には前向きな習慣が根付いていることを願っています。

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ヨシダナギさん×JICA職員編集後記はこちら

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