4倍速視聴が当たり前!? 進化する「動画」が習慣を変える
みなさんは旅行先の名物・名所を知りたいとき、新しく挑戦する料理のレシピを知りたいとき、どんな方法で調べていますか?
インターネットで検索したり、SNSをチェックしたり、雑誌を読んだり、さまざまな方法があると思います。そのなかでも「動画」を見る機会が増えたように感じるのではないでしょうか。
「百聞は一見に如かず」ということわざがあるように、「動画」は必要な情報を分かりやすく伝えてくれます。そんな便利な「動画」は私たちの生活にどのような影響を与えているのでしょうか?
5年間で劇的に普及。「動画」によって私たちの習慣はどう変わった?
少し前まで「動画をつくること」は日常生活のなかでは少し遠い存在で、撮影は必要な知識を持った一部の職業の人たちが行うことでした。また、「動画を見ること」も映画館やテレビでないと叶いませんでした。
ところが、インターネットの普及や、カメラ、スマートフォンなどの進化により、「動画」は誰もが手軽に撮影して発信できるものになり、いつでもどこでも見ることができる身近な存在へと姿を変えました。いまや日々の生活のなかで「動画」を見ない日はないと言えるかもしれません。
はたして「動画」は私たちの習慣にどのような影響を与えているのでしょうか?
今回は、2014年にワンメディア株式会社を創業し、「動画」について多彩な情報を発信されている明石ガクトさんにお話をうかがいました。
明石さんは「動画」が徐々に存在感を増しつつあった2018年に「5年後には世界のあらゆるものが動画化する」と提言した『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』(幻冬舎)を出版。そして、最新の著作『動画大全』(SBクリエイティブ)ではさらに進歩を遂げた「動画3.0」時代について語り、注目を集めています。
なぜ「倍速視聴」「タイパ」が広まったのか? 背景と影響による習慣の変化
カメラやスマホといった技術的な発展だけでなく、私たちが視聴している「動画」というコンテンツの変化も「習慣」に影響を与えていると明石さんは語ります。
明石:「倍速視聴」や「タイムパフォーマンス」という象徴的な言葉が使われるようになったのも、「動画」が生活者にもたらした大きな変化だと思います。以前まで「動画」を倍速で見るということは、基本的にはあり得なかったわけですが、いまはYouTubeでもNetflixでも再生速度を速くして見る人が増えています。また、TikTokに代表する「ショート動画」と呼ばれるものが世間で受け入れられているのも、タイムパフォーマンスを追及している結果だと思います。
その背景には、「可処分時間の奪い合い」があると言われています。間違いなく、現在の人類は誕生してから一番コンテンツがたくさんある時代に生きている。見たいものが多すぎるわけです。これが動画の視聴習慣を大きく変えていると思います。
加えて明石さんは、短い動画で、情報を効率よく大量に接取するという現在の視聴習慣は、脳の情報処理速度に影響を与えるのではないかと言います。
明石:高速道路を運転していて途中で一般道に降りると、ほかのクルマの速度が遅く感じませんか? あのように、基準とする速さをどこに置くかによって相対的にスピード感も変わるのではないでしょうか。人間の脳には未知の部分が多いから、実はもっと速く処理できるのかもしれません。
SNSで「4倍速でもいいぐらいだ」と言っている若者がいて、そのときは「さすがに4倍速はないな」と個人的には思いましたが、将来の世代はそれでも聞き取れて理解するようになるかもしれませんね。
「動画」は誰もが使えるコミュニケーションツール。
年賀状や暑中見舞いも身近な発信が「動画」に変わる?
明石さんは今後も「動画」の存在感は増していき、企業だけではなく、私たち一般的な視聴者も「動画」を身近なコミュニケーション手段として使うようになるのではないかと予測します。
明石:「動画」の利用はますます拡大します。例えて言うなら、誰もが原付バイクに乗るようになると思ってほしいです。いままでは歩くか、自転車を漕ぐしか選択肢がなくて、予算をたくさん持っている人たちだけがクルマに乗っていたような環境でした。それが、いまは全国民に原付バイクが配られて、気軽に誰でもある程度までの速度は出せるという状況です。「動画」に対する敷居はとても低くなると思います。
以前なら自分の近況報告などは、年賀状やお歳暮、暑中見舞いなどでしたが、いまではみんなカジュアルにSNSで発信するわけです。SNSを開けば、仲のいい友人や親しい同僚でなければ知りえなかったようなことが報告されている。そのように気軽にできるようになれば、どんどん新しいテクノロジーを使って、いままでヴィジュアル化されていなかったものがどんどん「動画」になる時代が来ると思います。
「選択肢」が「幸せ」につながる。ますます進化する「動画」がもたらす未来
じっくり腰を据えて大スクリーンで鑑賞したり、スマホのなかで短くコンパクトに観賞したり、今後も多彩なかたちを取りつつ「動画」は拡大していくと予測する明石さん。「たくさんの選択肢があるということはやはり幸せなことだし、選択肢があるから見られる新しい世界が現れてくるのではないか」と語ってくれました。確かに私たちの生活において、「動画」の果たす役割は大きく、接する機会もますます増えていくと思います。
そして、「動画の存在感が増した生活環境」に変化することは少なからず私たちの「習慣」にも影響しています。これから加速・拡大する「動画」が、私たちの習慣にどのような影響を与えてくれるのか楽しみです。
LION Scopeでは、「習慣」についてこれからも広く・深く探究していきます。みなさんも「習慣」について一緒に考えてみませんか?
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