冷凍餃子の張りつき原因究明に挑む!フライパンと向き合った3か月間の軌跡
こんにちは。広報担当の柘植(つげ)です。
突然ですが、みなさんは「冷凍餃子フライパンチャレンジ」を知っていますか?
味の素冷凍食品さんが、冷凍餃子の張りつきの原因解明のために、ギョーザ※が張りついてしまったフライパンを送ってほしいと募集したところ、3520枚のフライパンが届いたことがきっかけです。フライパンを収集し、より張りつかないギョーザを目指して製品の改良に挑戦する、味の素冷凍食品さんの「冷凍餃子フライパンチャレンジ」はSNS上で大きな話題になりました。
味の素冷凍食品さんのnote記事はこちら▼
なぜライオンのnoteでこれを紹介しているのか、ちょっと不思議に思われる方もいるかもしれません。実は、味の素冷凍食品さんからお声がけいただき、ライオンも同チャレンジに参画しているからなのです。
パリッとジューシーな羽根つきギョーザが焼き上がる感動をもっとたくさんの人に届けたい! そんな願いを込めて進めてきたプロジェクト。その成果の一部は、3月8日の「ギョーザの日」に味の素冷凍食品さんと一緒に発表しました。…が、ちょっと時間を巻き戻して、この記事では、「冷凍餃子フライパンチャレンジ」に参画したライオン研究員の瀬尾さんと五十嵐さんに話を聞きながら、ライオン側の「冷凍餃子フライパンチャレンジ」の様子をお伝えしたいと思います。
目に見えない汚れを分析する
味の素冷凍食品さんからお話があったのは2023年の年末。ギョーザの改良を進める中で、台所用洗剤の開発をしているライオンと一緒にギョーザの張りつき原因を分析することで、味の素冷凍食品さんが目指している「ギョーザの永久改良」のヒントを得ることができるのではないかと考えられたそうです。
まずは、味の素冷凍食品さんからライオンの研究所に、30枚のフライパンを送っていただきました。どれも生活者から提供いただいた、ギョーザが張りつくフライパンです。
味の素冷凍食品さんの方で、ギョーザの焼き検証はすでに終えられていました。市販の台所用洗剤で洗ってある状態で、目に見える汚れはありません。
「最初は、ギョーザが張りつく部分に目に見えない汚れが残っているのではないかという仮説を立てました。ところが、実際にギョーザを焼いてみると張りつく場所はいつも同じとは限りませんでした。そこで、張りつく部分だけでなく、フライパン全体に残っている汚れは何か、その種類と量を調べて比べてみることにしました」(五十嵐さん)
食品の代表的な汚れである脂質(油)、でんぷん、たんぱく質がそれぞれどのくらいついているのかを分析し、ギョーザの張りつき度合いとの関係を調べました。
その結果、ギョーザの張りつき度合いが大きいフライパンほど、たんぱく質汚れが多く残っていることがわかりました。
たんぱく質汚れを落とす酵素の力
張りつきの度合いと、残っているたんぱく質の量に関係があるのなら、フライパンのたんぱく質汚れをきれいに落とせば、ギョーザの張りつき度合いが改善するかもしれません。
たんぱく質汚れを効果的に落とすことができる代表的な成分といえば…「酵素」なんです。
そこで、プロジェクトチームに、酵素入り台所用洗剤「CHARMY Magica酵素+」(以下、Magica酵素+)の開発を担当している瀬尾さんが加わりました。
瀬尾さん、まずは酵素について教えてください。
「酵素は化学反応を助ける物質です。私たちの体内でも食べ物を分解する『消化酵素』が働いています。また、でんぷんやたんぱく質に特異的に作用するため、酵素入り洗剤で洗うとこれらの汚れが落ちやすくなることがわかっています※。ちょうど当時、従来品より酵素を3倍量に増やした改良新製品の開発に取り組んでいたので、まさにぴったりのタイミングでプロジェクトに参画できました」(瀬尾さん)
瀬尾さんたちは酵素3倍量のMagica酵素+であれば、フライパンに残存したたんぱく質汚れを落とせるのか検証することにしました。
科学的にしっかりと検証するには30個のフライパンでは足りません。ライオン研究チームが味の素冷凍食品さんの研究室にお邪魔して、先方と一緒にさらに多くのフライパンを調べました。
まずはフライパンに付着しているたんぱく質の分析です。
フライパンの表面をこすって、どれくらい見えないたんぱく質汚れが残っているのかを調べます。
ひたすらこする!
分析する!
そして、
酵素入りor酵素なしの洗剤でひたすら洗う!
分析する!
「フライパンをこする作業や、こすりとったサンプルの分析、そして洗剤でフライパンを洗浄する作業など、それぞれ分担して検証を進めました。開発した製品の洗浄力には自信がありましたが、生活者が長く使用したフライパンを洗うのは初めてだったので、どんな結果が出るのか楽しみでした。結果として、酵素入りの洗剤では、フライパンに残るたんぱく質を大きく減らせることが確かめられたので、心の中でガッツポーズをしましたね」(瀬尾さん)
酵素の有無でかなりの差が出ていますね。
「つけおき洗いをすれば酵素なしの洗剤でもより多くの汚れを落とせるかもしれませんが、今回の実験では軽い力で行うこすり洗いだけで汚れが除去できるかを確かめました。この取り組みによって、酵素を含んだ洗剤で洗うと、蓄積した『たんぱく質汚れ』を軽い力で落とせることが分かりました。実際に生活者が使っていたフライパンで検証できるという貴重な機会をいただけて、さまざまな気づきがありました。これまでは目に見える汚れをいかに落とすか、という視点で研究していましたが、今回の検証の結果、Magica酵素+を使うことで目に見えない汚れもきれいにできる可能性が見えたことは、開発者として大きな自信につながりました」(瀬尾さん)
実際にたんぱく質が落ちたフライパンでは、ギョーザの張りつきが改善されるものもあるようです。パリッとジューシーな羽根つきギョーザが焼き上がる感動をみなさんにもぜひ体感していただきたいです。
焼いたギョーザを配って回った
普段の研究とはちょっと違う、このプロジェクトならではのエピソードも、おふたりからいろいろ聞いてみましょう。
「ギョーザの張りつき具合を調べるために、検証中は何度も、味の素冷凍食品さんのギョーザを焼きました。最初はチーム内でおいしくいただいていましたが、あるときフライパンの汚れ検証のために480個のギョーザを焼くことになって、これはさすがに食べきれないと思いました。そこで所内でギョーザを食べたい人を募集して、焼いたギョーザを配って回りました」(五十嵐さん)
みなさん、喜ばれたでしょうね。
「まだ研究所内でも私たちのプロジェクトの内容を詳しく知らない人も多かったので、あいつら突然ギョーザを焼き始めたぞ…と、ちょっと不審がられていたと思います(笑)」(瀬尾さん)
「ギョーザの日」に研究成果を発表
今回の研究によってわかったことは、以下の2点です。
ギョーザがフライパンに張りつく要因のひとつは、フライパンに残っているたんぱく質であること
フライパンに蓄積した「たんぱく質汚れ」は酵素を配合した台所用洗剤で洗うと効果的に取り除けること
これらの成果を、3月8日の「ギョーザの日」にニュースリリースするとともに、味の素冷凍食品さんと共同開催したイベントで発表しました。多くのメディア関係者に集まっていただき、その前で、瀬尾さんが実演を交えて、いきいきとプレゼンをしてくれました。
チャレンジはまだまだ続きますが、ひとまずここまでの感想をおふたりに聞いてみます。
まずは瀬尾さん。
「今回のように実際に生活者が使ったフライパンを用いて大量に分析したり実験したりすることはなかなかできません。味の素冷凍食品さんのお客様ファーストで永久改良を進める姿勢やその行動力には大変刺激を受け、貴重な経験になりました」(瀬尾さん)
五十嵐さんはいかがですか?
「味の素冷凍食品さんと協働することで、生活者の困りごとを少しでも解決し続けることの大切さを改めて認識しました。これからも、生活者が困っていることや、気づいていない課題や改善点をみつけて、暮らしをより快適で心地よいものにしていきたいと思っています」(五十嵐さん)
おふたりとも、ありがとうございました!
この記事を書いていると、ギョーザが食べたくなってしまいました…。
読んでいただいた方も、食べたくなってくれていたら嬉しいです。
説明書通りに焼いているのにギョーザが張りついてしまう…という方は、ぜひ一度、4月から改良新発売されたMagica酵素+を使ってフライパンを洗ってみてくださいね。
数百種類の配合を試し、酵素を従来品よりも3倍量に増やすことに成功させた瀬尾さん。そんな瀬尾さんが挑んだ『CHARMY Magica酵素+誕生までのあゆみ』はこちらからお読みください!
フライパンが長持ちする正しい洗い方については、ライオンのオウンドメディアLideaでも紹介していますので、よかったらこちらもご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
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