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特別な日に寄り添う。ブライダルフォトグラファーの仕事に隠された習慣。

経験を積み重ねるなかで築かれていく、仕事にまつわる習慣。あなたは仕事を進めるうえで、どんなことを意識していますか? 
効率化や成果をあげるための習慣もあれば、一緒に仕事をする人が心地よく過ごせるようにと生まれた習慣や、お客さまの笑顔のために身についた習慣もあるでしょう。 

プロフェッショナルの仕事の習慣を知ることは、そんな「自分以外の誰か」にむけたやさしい習慣に気づき、私たちの日常を支えるさまざまな習慣に思いを馳せるきっかけとなるかもしれません。 

今回取り上げるのは、日々、人生の大きな節目に立ち会うことが日常となる 、ブライダルフォトグラファーという仕事。

人生の晴れ舞台を切り取るフォトグラファーが、仕事のなかでつくり上げてきた習慣とは?

日々、当たり前に行っている小さな習慣に隠れた、深く温かい思いに迫ります。


毎日が「特別な1日」の連続

お話をうかがったのは、結婚式や記念日の撮影を請け負うフォトグラファーのKさん。結婚式場を持つ都内ホテルで、専属フォトグラファーとして数多くのカップルの撮影を担当しています。

「結婚式は一世一代の晴れ舞台。ご新郎さま・ご新婦さまともに、長い準備を重ねてこの日を迎えられています。その特別な1日を撮影させていただくわけですから、私たちフォトグラファーも責任重大です」

 繁忙期には1週間のすべてがブライダルの撮影で埋まることもあるというKさんにとって、「結婚式」は日常であり、職場のはずです。けれど、長年ブライダルフォトを撮り続けていても、毎回緊張するし、責任を感じることに変わりはない、とKさんは言います。

「結婚式はやり直しがきかないですからね。お客さまとも毎回、一期一会。おふたりは大舞台を前にして、緊張も不安もあるはずです。そうしたなかで、おふたりらしい表情を撮影させていただくにはどうしたらいいか? 喜んでいただくために必要なことは何か? 撮影はもちろん、写真の加工やアルバム制作といった撮影後の後処理まで、毎回夢中になってやっています」

「幸せな思い出」を残すことを最優先に

Kさんが目指すのは、その時に見てうれしいのはもちろんのこと、年月が経っても何度も見返したくなるブライダルフォト。構図やポーズの美しい写真が「良い写真」とは限らない、とKさんは語ります。

「理想的なポーズや構図にこだわるより、おふたりらしさがにじむ、その日の幸せな気持ちがあふれるような写真であることのほうが大切。あれこれポーズの指示をして、ただでさえ緊張しているおふたりに苦労をさせたくない、というのが私の考えです。写真はずっと残るものですから、式当日のおふたりの幸せをそこに閉じ込めたい。撮影そのものが楽しい思い出であってほしい。写真を見返すたびに、うれしさや楽しさを家族で語りたくなる思い出になっていれば、ブライダルフォトグラファー冥利につきますね」

スタッフはみんな、写真をレイアウトしながら「すてきでしたね、アルバム喜んでもらえるといいですね」なんて話しをしながら作業しています。

もちろん、ブライダルフォトに写真としての完成度が求められないわけではありません。プロが撮影するからには、普段のスナップ写真とは一味も二味も違う仕上がりを目指すのは当然です。

ただ、結婚式という人生の大きなイベントのなかで行われる撮影だからこそ、形に残る写真の完成度だけでなく、特別に撮影したそのこと自体もすばらしい体験として記憶に残るものであってほしい。ブライダルに関わるプロとしての信念が、「苦労をさせたくない」という言葉に込められているのだと感じます。

爪のケアが習慣に。その意外なワケとは?

Kさんは、撮影スタジオに歩いてくるおふたりを見てセットにひと工夫をすることもある、といいます。

「たとえばちょっとヒールが低いかもしれない、と感じたら、すぐに低めの台を用意します。少し高さを上げるだけでも、ドレスのシルエットがきれいに出るんですよね」

新婦がこだわりを持って選んだドレスを、そのイメージどおりに美しく写真におさめられるように。ブライダルフォトグラファーとして、特別な日を過ごすふたりの想いに徹底的に寄り添う仕事ぶりが、小さな違和感も見逃さない観察眼を培ってきたのでしょう。
 
「そういえば、爪のチェックも毎朝の習慣ですね。ウェディングドレスには繊細なレースも多いですから、万が一にもひっかけたりしないように。爪は短くそろえ、ガラス製のやすりでなめらかにととのえています。予備のやすりも持ち歩いていますよ。大切なドレスに何かあったら一大事ですから」

ハレの日に一点の曇りもないようにと万全な準備をするプロ意識と、相手の大切なものを自分も大切にする温かな心遣いでうまれた小さな習慣。
こうした徹底的におふたりに寄り添う姿勢とそのなかで生み出された習慣こそが、喜びと同じくらい緊張と不安も抱えているおふたりの心をなごませ、自然な笑顔を引き出す最大の武器なのかもしれません。

レンズの先のおふたりに全身全霊で向き合う

Kさんのお話の端々に感じられるのは、ブライダルフォトグラファーの仕事のすべてに、被写体となるおふたりの幸せを願う気持ちが流れているということです。
築き上げてきた習慣は、どれも自分の仕事をスムーズに進めるためのものでなく、レンズの先に立つお客さま視点に立ったもの。

プロの技術をもってすれば、見る人が「すてき!」と喜ぶ写真を撮影することは難しいことではないかもしれません。でも、それだけでよしとせず、「もっとおふたりらしい表情を」「おふたりが心から喜ぶ1枚を」と追求する。撮影している瞬間もよい思い出になるように、ふたりの幸せな気持ちに寄り添うことを何より大事にする。

こうしたブライダルフォトグラファーの習慣、考え方の背景には、やはりお客さまにとっては一生に一度の晴れ舞台、その大切な1日を記憶に残す仕事である、という大きな責任感があるように感じられます。

自分にとっては日常でも、相対するお客さまにとっては最大の非日常。その大きな責任感が、日々の仕事に心地よい緊張感をもたらしているのでしょう。そして、働いている中で無意識のうちに生まれた、さりげない心配りや気持ちをなごませる声かけといった習慣が、非日常に立つおふたりの緊張をほぐしていく。 

自身はほどよく緊張しておふたりに向き合うこと、おふたりにはリラックスして自然体でいてもらうこと、ブライダルフォトグラファーとしての習慣はその相反するバランスをとる架け橋となっている、ともいえそうです。

何度も開きたくなる記念写真、ブライダルフォトがあったなら、その写真を撮ったフォトグラファーは、あなたの特別な日を自分ごとのように祝う気持ちを持ってシャッターを切ってくれたのかもしれません。

あなたの仕事には「自分以外の誰か」にむけたやさしい習慣はありますか?
気が付いてないだけで振り返ってみると自分にもきっとあるはず。
そしてまわりもきっと「あなたに向けたやさしい習慣」が日々生まれているはずです。

相手を想って生まれた習慣があることに気づくことで、当たり前の日々が少し変わって見えるかもしれません。
 
LION Scopeでは、「習慣」についてこれからも広く・深く探究していきます。みなさんも「習慣」について一緒に考えてみませんか?


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