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世界中の洗濯事情を知りたい男―海外の洗濯ももっとラクに

ちょっと変わった旅の楽しみの提案

こんにちは。みなさんは東南・南アジアに旅行に行ったことはありますか? もし、まだ行ったことがないという人は、そこでどんなことをしてみたいですか?
 
有名な寺院を拝観したり…

タイの寺院寺院ワットポー

現地ならではのおいしいご飯を食べたり…

マレーシア料理のナシレマ

その国の家庭におじゃまして、洗濯事情を見せてもらったり…は、しませんよね(笑)

バングラデシュの洗濯風景

自己紹介が遅れました。ライオンで海外向けの衣料用洗剤の研究開発を担当している坪井といいます。

ライオンはこれまでにアジア各国で製品を展開していますが、僕はタイ、マレーシア、バングラデシュなど、主に東南・南アジア用の製品を担当しています。
 
洗濯事情は国によっていろいろ異なります。例えば、タイやマレーシアでは洗濯機が普及していますが、バングラデシュではまだ普及しておらず、ほとんどの人はバケツに水と洗剤を入れて手洗いしています。
 
洗剤の機能も、日本とバングラデシュでは異なるニーズに対応しています。日本では、洗剤は主に皮脂や汗、ニオイなど、身体から出る汚れを効果的に落とすことが求められます。一方、バングラデシュでは、第一次産業や第二次産業が盛んなため、畑仕事の泥や工場仕事の油など、外から付着する汚れを落とすことが洗剤の主要な機能となります。このように、各地域の生活環境に応じて、洗剤の機能も異なる特徴を持っています。

バングラデシュの街中には羊もいました

実は、泥や油のような汚れを落とすのが得意なのが、粉末洗剤です。粉末洗剤は弱アルカリ性で頑固な汚れの分解や除去に効果的なため、その特性を活かして東南・南アジア用の衣料用洗剤では主流となっています。一方、日本では皮脂汚れの除去や香りの付与、色落ち防止などのニーズに応えた、液体洗剤が主流になっています。
 
他の国の洗濯事情を知ると、これまで自分たちが当たり前だと思っていた習慣の、ちょっと違った面が見えてきます。旅行中に、家庭にお邪魔して洗濯行動を見せてもらう機会はなかなかないと思いますが、もしチャンスがあればぜひ、ご飯を作ったり洗濯をしたり掃除をしたりという、万国共通の習慣をウォッチしてみてはいかがでしょうか。自分たちとの共通点や違っているところを見つけると、旅がいっそう楽しくなると思います。

バングラデシュの住宅環境

海外向けの洗剤をどうやって開発しているのか

ライオンには海外向けの製品を開発する部所があります。僕は、2013年にライオンに入社して6年間、日本向けの衣料用洗剤を研究・開発したあとに、2019年から海外向けの部所に異動しました。
 
製品を開発するための研究プロセスは似ているので、海外向けの部所だからといって他と大きく変わっているわけではありません。でも、メンバーに日本人以外が多くいることは、海外向けの部所の特徴かもしれません。例えば日本語がペラペラな上に4か国語を操るマレーシア人の後輩のように、優秀でグローバルな研究員がどんどん入ってきます。このままでは置いていかれてしまいます…。危機感を覚えて、負けないように英語を必死にがんばっています(笑)

ちなみに、僕がこの部所に異動したときは、英会話が苦手でした。ところが、すぐにタイへ短期派遣されることになったのです。ジェスチャーとノリだけで乗り切る…わけにはいかず、言語で伝えきれない部分は、データやパワーポイントの資料、さらには現場でホワイトボードを駆使しながら細部まで伝えながらコミュニケーションを図り、業務を遂行しました。現地メンバーも協力的でとても助かりました。今となっては笑い話ですが、あのときは必死でしたね。


タイの現地メンバーとパタヤビーチへ

海外向けの製品を作るときには、現地の調査会社や研究所と協力して、生活者がどのように洗濯をしているのかを調べます。汚れた洗濯物を集めて日本に送ってもらって汚れを分析したり、水質を調べたりもします。
 
でもやっぱり現地に行ってその場で洗濯している様子を見せてもらうと、多くの気づきや学びがあります。洗剤をどのくらい入れるのか、手洗いの場合はどのくらい力を入れてこすっているのか、使っている水はどのくらい汚れているのか、どんな動作で洗濯を行っているのか。
 
例えばバングラデシュは、洗濯機が普及していないため、洗濯は重労働です。洗濯している様子を見せてもらうと、自分たちの開発した製品が、少しでも洗濯をラクにできたらいいなという想いが、いっそう強まりました。

グローバルな視野で研究開発を行う面白さ

僕たちのチームは、アジア各国向けに特徴が異なる製品を開発しているため、ひとりで何か国もの製品群を担当することが、よくあります。
 
特に新たな国の製品開発に挑戦するときは、その国ならではの事情や課題を、製品で解決できる方法を考えます。そのために、現地のことをよく知ることが重要ですが、それだけでなくこれまで培ってきた経験も役に立ちます。僕は、入社時からずっと粉末洗剤の開発に携わっていたので、粉末洗剤に関して知見の積み重ねがあります。
 
2021年にマレーシアに駐在したときは、コロナ禍でリモートワークも多く、なかなか現地のメンバーとコミュニケーションを取るのが難しかったです。しかし、現地メンバーが対応に苦労していた品質トラブルにおいて、僕のこれまでの開発経験からすぐに原因究明と改善施策が提案できたことで、そこからは信頼を得て、よりスムーズにやりとりができるようになったのも、良い思い出です。

マレーシアの現地研究員たち

一番最近の仕事は、バングラデシュ向けの衣料用洗剤「Jet」の改良です。Jetはもともとバングラデシュの会社であるカロール社の製品ですが、2022年にカロール社とライオンが合弁会社を設立し、ライオンの研究開発力を活かして製品を改良することになったのです。
 
組成を抜本的に改良し、生活者のメリットがより伝わるように、パッケージに表示する言葉も見直しました。試作品を日本で検討し、2024年の2月にバングラデシュへ行って、問題なく生産できることを確かめました。

日本での開発メンバー。汗水流しながら試作を繰り返しました。

そして、4月に発売となりました。

2024年4月に発売されたバングラデシュの衣料用洗剤Jet

Jet 現地CMはこちら:https://www.youtube.com/watch?v=VrVPGijEr5Q

短期間で大きな改良を行ったハードなミッションでしたが、これまでの経験をすべて活かせた仕事になったなと思っています。

いろいろな国の洗濯の「面倒くさい」をなくしたい

僕は入社して12年目になりますが、衣料用洗剤ひとすじでここまでキャリアを築いてきました。ライオンは幅広いジャンルの製品を扱っているので、僕のようにひとつの分野をずっとやっている人は珍しいと思います(あ、でも、以前、このnoteにも登場した同期の山内くんは、容器の開発ひとすじですね)。
 
研究対象の製品が変われば、さまざまな経験値が増えていくので、複数ジャンルの製品の開発をしている研究員をちょっとうらやましく思うこともあるのですが、でも、今の仕事を僕は結構気に入っています。次にどんなことをやりたいかと聞かれたら、新しい分野の製品ではなく、新しい国向けの製品の開発をしたいと答えますね。国が変われば課題も変わる。その出会いがとても楽しいのです。
 
僕自身、洗濯はあまり好きではありません。面倒くさがりなので、できるだけラクにできたらいいなあと考えていて、それが製品開発のモチベーションのひとつになっているかもしれません。僕だけじゃなく、洗濯が面倒くさいなと思っている人は世界中にいると思います。だから、より簡単にきれいになる衣料用洗剤を開発して届けることで、世界の「洗濯が面倒くさい」を少しでも減らすことができたら嬉しいですね。

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