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面倒な年末の大掃除はなぜ恒例に?自分なりのつき合い方を考えてみよう

年末も近づいたこの時期。みなさんは「大掃除」にどのようなイメージを持っていますか? 「年末の恒例行事」「やると清々しい気持ちになる」というポジティブな印象もある一方、「大変で面倒くさい」「できればしたくない」という気持ちになってしまう人も多いでしょう。
 
全員に歓迎されているわけでもないのにもかかわらず、現代まで続いている年末の大掃除という風習。じつは世界的に見ても珍しい、日本独自の文化なのです。
 
今回は大掃除の由来や歴史について、昭和のくらし博物館館長で生活史研究家の小泉和子さんにお話をうかがいながら、大掃除の歴史を学び、現代に合った大掃除のあり方はどんなものなのかについて考えてみたいと思います。
(メイン画像:宮重千穂 / PIXTA)

大掃除の原型は平安時代にあった!? お正月準備の掃除とは

そもそも大掃除はどのように始まったのか? 小泉さんによれば、「平安時代の宮中で『お正月の三が日の儀式のために、準備として床板を拭いた・掃除をした』という記録が残っています」とのこと。「大掃除」という言葉は使われていないものの、お正月に備えて掃除をするという習慣は平安時代の宮中で始まったと考えられます。

昭和のくらし博物館館長 小泉和子さん

平安時代の宮中では年末だけでなく、旧暦で4月と10月の衣替えの時期にも大掃除を行っていた可能性が高いのだそう。当時は衣服のみならず、御簾(みす)や帳(とばり)、敷物など家のしつらえも季節ごとに替えていたといいます。

「御簾」は宮中などで部屋を仕切るために使われていたすだれのこと。「帳」も同じく室内や外部との境に垂らした布を指す
(写真提供:風味豊の書業無情庵 / PIXTA)

中世に入るとお寺が掃除文化の中心になります。中国語として入ってきた「掃除」という言葉もこの時期に広まりました。
 
掃除が広く一般で行われるようになったのが近世です。その理由が住宅の変化。 

小泉:江戸時代中期以降、畳が敷かれ、床の間があり、襖、障子のある家に、一般の人々も住むようになりました。箪笥(たんす)などの家財道具も増えて、ほこりが目につくようになり、掃除、とくに拭掃除が一般に広がりました。 

旧暦の12月13日は「煤払い(すすはらい)」といって、武家も町方も江戸中が一斉に大掃除を行なったそう。この日に江戸城で恒例として行なわれていた「御事納・御煤払」(1年を締めくくり、大掃除をして正月準備を始める日)が一般に広まったからだと考えられています。

昭和の大掃除はうれしい「イベント」? その理由は

小泉さんの子ども時代の昭和初期、1930~1940年代の掃除についてお聞きすると、小泉さんは「毎朝の掃除は欠かさず行なっていた」と振り返ります。「大掃除」ならではの掃除場所として一番大事なのが「神棚」だそう。大掃除は毎年暮れに、来年の豊作をお願いする神さま・年神さま(としがみさま)を迎えるためにやるもの。そのため、その神さまを迎える「神棚」の掃除が重視されたのです。

大掃除では、神棚のものをすべて下ろして掃除したあと、しめ縄を新しいものに取り替えたという(写真提供:prado6557 / Shutterstock.com)

大掃除の日は家中の家具を外に出し、畳を上げて陽に当て、埃を叩き出します。建具も洗い、人手があれば障子の張替えまでしていたそうです。
 
このように聞くと、当時の大掃除はかなりの重労働に見えます。けれど小泉さんによれば、子どもの感覚としては「イベント」に近かったと言います。その理由として挙げられるのが、親戚などが大勢手伝いに来る「非日常感」、そして「店屋(てんや)もの」なのだとか。大掃除の日は忙しいので、お蕎麦屋さんなどで出前を取ったのです。

小泉:いまは出前を取るなんて何でもないけれど、昔は特別で贅沢なこと。だから特に子どもは大喜びでした。掃除が終わったあとはお饅頭などのおやつをみんなで食べるのも、楽しみの一つだったんですよ。

平安時代からいままで、大掃除が続いている理由とは?

住宅や生活様式の変化を経ながらも、平安時代から令和の現在までなぜ続いてきたのでしょうか。その理由として小泉さんは「自然条件」と「新しさを貴ぶ日本人の価値観」を挙げます。

小泉:多湿な日本では、ほこりを放置すると油分や湿気と合わさり、汚れとして付着してしまいます。夏場はカビも発生しやすく、清潔を保つためには定期的な掃除をしなければなりません。一方、高い山が多い日本は川の流れが急なため水が清らかで、湧水や井戸水もきれい。水に恵まれています。水で洗えばきれいになる、という環境で過ごしてきたことも、掃除が根づいた理由の一つではないでしょうか。

また、日本は極寒でも熱暑でもなく、植物がよく育ち、四季がはっきりしています。枯れた草木も春になれば必ず新しく芽吹いて輝くばかりの美しさです。そうした自然を日本人は、何より貴いと感じてきたのです。

 
一方、日本は建築でも家具道具でも木材を自然のまま使うので、しばらくすると汚くなってしまいます。そこでメンテナンスをして新しいときの美しさをとりもどさなければならず、ときには素材を取りかえることも。このような「新しさを貴ぶ」考え方は、掃除にも通じます。これが年に一度、年神さまを迎える伝統とともに大掃除が引き継がれている理由の一つなのではないでしょうか。
 
現代の日本の建築様式は伝統的なものとは変わってきていますが、それでも定期的に大掃除をしないと汚くなってしまう。『年に一度は大掃除をする』というのは、合理的な習慣です。掃除は、やってみればきれいになって気持ちのいいもの。だから、いままで残っているのではないでしょうか。

現代の大掃除は人それぞれ。自分なりの方法を模索してみては

清潔な住居を保つために掃除は避けて通れませんが、現在はライフスタイルも多様化しており、なかなか本腰を入れて大掃除をする時間がつくれないという人も少なくないと思います。いまでは掃除ロボットや掃除の時短用品を活用してパッと済ませる、家事代行サービスを利用するなどの方法を選ぶこともできます。

ライオン「ルックプラス」シリーズも「がんばらなくてもキレイ」をコンセプトにした掃除を提案

昭和時代のように家族の「イベント」としてワイワイ大掃除をするのも楽しいかもしれません。もちろん、普段から掃除に力を入れている人は、わざわざ年末に大掃除はせずにゆっくりと過ごすのも一つの選択肢でしょう。
 
いまの時代、「大掃除はこうしなければならない」という正解はありません。みなさんも今年は、自分なりの大掃除の方法を試してみてはいかがでしょうか。

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