見出し画像

洗濯ぎらいの私が、洗剤を10年研究して感じた3つのこと。

初めまして、ライオンで洗濯関係の研究開発をしている大塚です。主に、洗剤について考えています。
先日、研究広報の担当者に「大塚さんにとって、洗濯とは?」と尋ねられました。どうやら新しい企画が始まって、私がそのトップバッターに選ばれたようです。

洗濯とは……いったい何でしょう。何とか私なりに答えてみたいと思います。


洗濯は世の中と私を繋ぐもの

洗濯関係の仕事を始める前は、正直言うと、洗濯についてまったく興味がありませんでした。面倒くさくて手間がかかって、できればしたくない。実は今でもプライベートでは同じ思いがあります。だからこそ、洗濯を少しでも楽しいものに変えていきたいなという想いをもって、製品を開発しています。

洗濯は日々の生活に欠かせない家事です。洗濯にまつわる製品を開発するときには、様々な人の暮らしを想像します。そこに洗濯研究の難しさと面白さがたくさん詰まっています。

たとえば、生活に使われている繊維製品、衣類やタオルには、様々な種類があります。新しい洗剤や洗濯にまつわる技術を開発するにも、どの衣類・どのような人をターゲットにするかで実験の条件が変わります。製品をどんな人がどのように使うのかを考えて研究開発するため、大学の研究とはまた違って、大変な部分もありますが、やっぱり楽しいです。

私が携わった仕事の魅力をまとめてみました。

洗濯研究の魅力①:ニオイ評価で盛り上がる職場

もしかしたら、あまり共感されないかもしれませんが、私の職場ならではの面白さがあります。普通の人は、洗濯といえば、衣類をきれいにすることだけを考えると思いますが、私たちは洗剤の性能を評価するためにわざと汚れた衣類をつくることがあります。たとえば、消臭効果を評価するときには、くさいタオルが必要です。使い古しのタオルを集めて、それを洗い、部屋干しの状態を再現する高温多湿の部屋に置きます。そうするとタオル上で菌が増殖して、独特の、あの部屋干しのニオイになります。

そのようにしてつくったタオルを、研究員複数名で自身の鼻を使用して評価します。ニオイというのは分かりやすい指標であるため、特にくさいタオルの場合には、そのニオイに反応し盛り上がります。部屋干し臭を再現するためにつくったタオルのニオイを嗅ぐ際には、サンプルによってもニオイの強さが変わり、こんなにもくさくなったかと、研究員同士でまたわっと盛り上がりながら、評価をしています。

洗濯研究の魅力②:海外生活の気分を味わえる

ライオンはアジアを中心とした海外向けの製品の開発にも力を入れており、海外にも研究所を持っています。私も4年前まで海外製品の開発に携わっていました。それぞれの国の生活に合わせた製品の開発をする必要があり、日本との違いを感じる機会になりました。

 日本と海外との違いはいろいろありますが、たとえばマレーシアの場合は、洗濯に使用する水質が日本とは異なることがあります。水の中に不純物があると、洗ったあとの衣類に蓄積し色みが変わってしまう可能性があるため、それをふまえた洗剤を開発する必要があります。マレーシアの生活者の方々が使ったバスタオルを集めて日本に送ってもらったり、洗濯に使っている水を採取して送ってもらい、分析も行いました。
 
日本とは異なる海外の洗濯事情に合わせて製品を開発していくことで、技術の幅が広がります。マレーシア向けに研究していた技術が、のちに日本向け製品の開発に活かされることもありました。

海外向けの製品を開発していた期間は結構長かったのですが、実際に海外に住んだのは私の場合は3か月間だけでした。その当時は、韓国向けの開発を担当しており、現地の研究員と一緒に新たな製品に取り組むことになりました。幸運にも早く製品が完成したため、3か月の滞在期間で終了となりました。開発成功は喜ばしいことですが、結構楽しくやっていたので、正直、もうちょっと長くいたかったですね。

洗濯研究の魅力③:見た目もときめく新しい洗剤を開発
自分の開発した洗剤を世に送り出すことができて、実際に使っていただけることは、やっぱりやりがいがあります。最近では、「NANOX one」という洗剤の開発を担当しました。
 
普段もよくドラッグストアの棚を眺めたりしますが、自分が開発した製品が並んでいるのを見るのは、嬉しいですね。どんな人が手に取ってくれるのだろうと思って、ドキドキします。我が子の発表会を見守る親の気持ちです。

NANOX oneをお披露目する製品発表会では、多くの社外関係者の前で、汚れ落ち実験を実演しました。布をピンセットでつまんで、ビーカーの中で洗って、汚れが落ちるけれど色あせが少ないということを示す実験です。緊張で手が震えて、ピンセットがビーカーに当たって、カカカカカと大きな音が鳴り響いてしまいました。とても恥ずかしかったのですが、おかげで笑いと拍手をもらうことができたので、結果オーライかな……と思っています。

楽しい洗濯ライフをかなえるために性能も見た目もこだわった

最後に、私の開発したNANOX one の紹介をさせてください。NANOX oneはオレンジと紫とターコイズブルーの3色で展開している透明感のある洗剤です。

はじめて見た方は、色の鮮やかさに驚くかもしれませんね。でも、実はこの見た目にはかなりこだわりました。店頭で見かけて、家に連れてかえりたくなるような洗剤を目指しました。そして、家のランドリースペースに置いてもらって、毎日の洗濯に少し彩りを添えられたらなと考えました。
 
というのも、私自身が洗濯って面倒くさいなあと思っているので、家にきれいな色の洗剤があったら、少しは気分が上がるかなと思うからです。面倒くさいなと思っている人に、きれいな洗剤を見て、少しでも洗濯に対してポジティブな気持ちになってもらえたら嬉しいです。

こだわったのは見た目だけではありません。NANOX oneは、これまでのNANOXの洗浄・消臭力をさらにパワーアップさせています。もちろん、先ほどご紹介したニオイ評価もたくさんしています(笑)。それに加えて洗濯物の色あせを防ぐ力も付与しているんです。

洗浄力の向上と同時に衣類の色あせを防ぐのは、技術難易度が高い挑戦でした。しかし、汚れに作用すると同時に布を保護する技術を開発したことで、この難ミッションを達成することができました。

研究技術についてもっと知りたい方はコチラ

NANOX oneは高い洗浄力を持つので、ぜひ普段着から汚れた衣類までどんどん洗ってほしいです。色あせ防止に関して実感が湧くのは、3週間とか5週間とか、しばらく経ってからかもしれませんが、違いを感じてもらえると思います。私は普段黒い服が好きなのですが、黒は色あせを感じやすい色です。でも、NANOX oneがあれば、安心して黒い服も着ることができそうです。

他にも ライブTシャツなど、洗濯の回数が多いけど色あせさせたくない衣類に使ってもらいたいですね。色あせしないと服が長持ちしますから、家計の節約やサステナビリティにも繋がります。洗剤から、いろいろなことを変えていけたらいいなと思ってます。

みなさんにとって洗濯とは?

一研究員の独り言をとりとめもなく書いてしまいましたが、洗濯について思いを馳せてもらうきっかけになったら嬉しいです。みなさんにとっての「洗濯」とは、どんなものでしょうか?よかったら、一緒に考えてみてくださいね。

▼マガジン「研究員'sストーリー」のそのほかの記事はこちら

▼LION研究開発サイトもぜひご覧ください!


この記事が参加している募集

家事の工夫

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

最後までお読みいただきありがとうございます! LION公式サイトもぜひご覧ください!